元信用調査員が教える、ネットの会社情報をうのみにしないための3つの確認

はじめまして、杉浦恭平と申します。
信用調査会社で15年、企業調査員として取引先の実在確認や登記の読み込みをしてきました。
いまは独立して、中小企業の方に向けて「取引前の会社チェック」の研修をしています。

調査員になって2年目の頃、先輩に報告書を突き返されたことがあります。
調べた内容はしっかりしていました。
ところが、調べていたのは依頼先とは別の、同じ社名の会社だったのです。

ネットで会社名を検索すると、それらしい情報がすぐに見つかります。
住所も、設立年も、口コミまで出てきます。
ただ、その情報が「あなたが調べたい会社」の「いまの姿」かどうかは、別の話です。

この記事では、私が調査の現場で毎回やっていた確認を3つにしぼってお伝えします。

  • 社名ではなく、法人番号で照合する
  • 情報の日付と「状態」を見る
  • 一次情報までさかのぼる

取引先を調べる担当の方にも、求人先やお店の運営会社を調べたい方にも使える手順です。

ネットの会社情報は、誰かが集めた「写し」です

企業情報サイトの多くは、国税庁の公表データや登記、ホームページの記載などを集めて、見やすく並べ直しています。
便利なのは間違いありません。
私もいまでも最初の当たりをつけるのに使っています。

ただし、写しは写しです。
集める過程で古くなることもあれば、別の会社の情報が混ざることもあります。
実際、ある企業情報サイトの下部には「正確性・完全性・安全性を保証するものではありません」という免責文が書かれています。

これは企業情報サイトに限りません。
国税庁の法人番号に関するよくある質問では、法人番号は「必ずしも法人等が実在することを証明するものではありません」と明言しています。
国の番号でさえ、それ単体では会社の実在を保証しないということです。

では、何をどう確かめればいいのか。
順番に見ていきます。

確認1:社名ではなく法人番号で照合する

同じ社名の会社は、全国にいくつもあります

意外に思われるかもしれませんが、会社名はかなり自由に決められます。
法務省の会社法の施行に伴う会社登記についてのQ&Aには、類似商号の禁止制度が廃止されたこと、商号と本店所在地がともに同じでなければ登記できることが書かれています。

つまり、住所さえ違えば、まったく同じ社名の会社が全国にいくつあってもおかしくありません。

試しに2026年9月28日、国税庁の法人番号公表サイトで「HBS」を検索してみました(部分一致、閉鎖した法人も含む条件)。
社名が「株式会社HBS」と完全に一致する法人だけで13件ありました。
一部を抜き出すと、次のとおりです。

本店所在地法人番号状態
東京都港区2010001120174存続
神奈川県横浜市港南区9020001086094閉鎖(2023年11月13日)
広島県東広島市5240001023863閉鎖(2021年11月26日)
埼玉県深谷市8030001163067存続
愛知県名古屋市中区8180001062171存続

このほか、「HBS株式会社」「有限会社HBS」など表記が少し違う法人もいくつもあります。
社名だけで検索して、最初に出てきた情報を「その会社のもの」と思い込むのは危ないということが、この表からもわかると思います。

「一緒に検索されているワード」は、その会社の情報ではありません

企業情報サイトでよく見かけるのが、関連ワードや「一緒に検索されているワード」の欄です。
これは多くの場合、その会社の情報ではなく「その社名で検索した人が、ほかに何を入れて調べたか」の傾向を示しています。

わかりやすい例を挙げます。
「株式会社hbs ハイエンド」が関連ワードに並んでいる、横浜の株式会社HBSの企業ページを見てみてください。
横浜市港南区に本店があり、2023年11月に登記を閉鎖した法人のページです。

そこには「株式会社hbs ハイエンド」「株式会社hbs 新潟」「株式会社hbs 深谷」といった言葉が並んでいます。
同じサイトにある東京都港区の株式会社HBSのページにも、「株式会社hbs ハイエンド」「株式会社hbs 新潟」という同じ言葉が出ていました。
同じ社名で検索する人が多ければ、法人が違っても似た言葉が並ぶわけです。

「ハイエンド」という名前の店舗を調べていて、この欄を見た人が「横浜のHBSの店なのか」と受け取ってしまうかもしれません。
でも、関連ワードは会社同士のつながりを示すものではありません。
私が公開情報で確認した範囲では、「ハイエンド」がどの法人とつながっているのかは確かめられませんでした。

調べたい店舗やサービスの運営会社は、店舗の公式サイトや契約書、領収書など、相手が自分で出した書類から法人名と所在地を拾う。
そのうえで法人番号を突き合わせる。
この順番を守ると、取り違えはぐっと減ります。

照合のやり方

照合に使うのは、13桁の法人番号です。
国税庁によると、法人番号は一度指定されると変わらず、社名を変えても本店を移しても同じ番号のままです。

照合の手順は、次の流れで十分です。

  • 相手の書類(契約書、請求書、会社概要)に書かれた社名と所在地を控える
  • 国税庁の法人番号公表サイトで、社名と所在地の両方で検索する
  • 候補が複数出たら、所在地の変更履歴まで見て1社にしぼる
  • 請求書にインボイスの登録番号(Tから始まる番号)があれば、Tを除いた13桁が法人番号と一致するかを見る

私が調査員時代に一番頼りにしていたのは、所在地の変更履歴でした。
相手の名刺の住所が公表サイトの旧住所と一致すれば、同じ会社である可能性がかなり高まります。

確認2:情報の日付と「状態」を見る

閉鎖された会社も、検索結果からは消えません

国税庁のFAQによると、清算が終わって登記記録が閉鎖された法人も、法人番号・名称・所在地は公表され続けます。
閉鎖された事実と年月日もあわせて公表され、削除はできません。

先ほどの横浜の株式会社HBSを、公的なサイトで時系列に並べてみます。

日付出来事確認した場所
2022年4月1日横浜市港南区内で本店所在地を変更国税庁 法人番号公表サイト
2023年10月1日インボイス登録国税庁 インボイス公表サイト
2023年11月13日登記記録の閉鎖等(清算の結了等)国税庁 法人番号公表サイト
2024年4月8日インボイス登録の取消国税庁 インボイス公表サイト

この表で私が目をとめたのは、閉鎖とインボイス取消の間の約5か月です。
登記が閉鎖されたあとも、インボイス公表サイトではしばらく登録が取り消されていませんでした。
公的なサイト同士でも、反映のタイミングはそろわないことがあります。
一つのサイトだけを見て「まだ登録がある、だから営業している」と判断すると、読み違えることになります。

会社が閉じたあとも、番号と名前はネット上に残ります。
「検索で出てくる」ことと「いまも営業している」ことは、まったく別です。

ここで見てほしいのは、法人番号公表サイトの「状態」の欄と、情報の最終更新日です。
企業情報サイトなら「情報更新日」がどこかに書かれているはずです。
日付の書いていない会社情報は、私は参考程度にしか扱いません。

解散・清算結了・閉鎖は同じではありません

「閉鎖」と書かれていると倒産したように見えますが、言葉の意味は少しずつ違います。

言葉意味会社はまだあるか
解散会社をたたむと決めた段階清算が終わるまでは存続
清算結了財産の整理が終わり、会社が消える段階存続しない
登記記録の閉鎖登記簿のその記録が閉じられた状態清算結了のほか、管轄外への本店移転などでも起こる

解散した会社でも、清算が終わるまでは存在しています。
また、法務局の管轄をまたいで本店を移すと、移転前の登記記録は閉鎖されます。
登記の言葉を一つ見ただけで「つぶれた会社だ」と決めつけないでください。

登記上は残っていても、動いていない会社があります

逆のケースもあります。
登記上は存在していても、実際には事業をしていない会社です。

法務省の休眠会社・休眠一般法人の整理作業についてによると、長く登記の動きがない株式会社は、毎年まとめて「解散したもの」とみなされます。
令和7年には、25,195社の株式会社がみなし解散の登記をされました。

登記があるから動いている会社、とは言い切れない。
閉鎖と書いてあるから消えた会社、とも言い切れない。
だからこそ、日付と状態を必ずセットで見る必要があります。

確認3:一次情報までさかのぼる

情報ごとに「元の出どころ」は決まっています

企業情報サイトやまとめ記事は、あくまで入口です。
大事な判断をする前には、情報の出どころまでさかのぼってください。

知りたいこと一次情報どこで見るか
会社があるか、どこにあるか法人番号・登記国税庁 法人番号公表サイト、法務局
代表者や役員、目的登記事項証明書法務局、登記情報提供サービス
インボイス登録の有無適格請求書発行事業者の登録国税庁 インボイス公表サイト
補助金や行政からの認定各府省の公表情報gBizINFO、各府省のサイト
事業内容やサービス会社自身の発信公式サイト、会社案内

経済産業省のgBizINFOも便利ですが、これも国税庁の情報に各府省のデータをひもづけて見せる仕組みです。
データの誤りは「出典元に問い合わせてください」という立て付けになっています。
どのサイトも、元の資料があってこその情報です。

実在する会社の名前や住所が、借り物のこともあります

一次情報にさかのぼる理由は、もう一つあります。
ネットに書かれた社名や住所そのものが、別の会社から借りてきたものである場合があるからです。

国民生活センターの注意喚起では、悪質な通販サイトに、実在する無関係の事業者の名称や連絡先が無断で載せられている場合があると伝えています。
会社名で検索して「ちゃんと実在する会社だ」と安心しても、その会社がサイトを運営しているとは限りません。

私が調査員時代に教わったのも同じことでした。
立派なホームページや、きれいな会社案内は、信用の材料になりません。
見るべきは、公的な記録と相手の言うことが一致しているかどうかです。

登記事項証明書は誰でも取れます

最後の決め手になるのは、法務局の登記事項証明書です。
誰でも手数料を払えば請求でき、ほかの地域の会社の分も最寄りの法務局で取れます。

法務省の「登記手数料について」によると、書面で請求すると1通600円、オンラインで請求して郵送してもらうなら520円です(令和7年4月1日時点の案内)。
証明書としての効力はありませんが、画面で内容を見るだけなら民事法務協会の登記情報提供サービスも使えます。

数百円で、代表者、本店の移転の履歴、会社の目的までわかります。
大きな取引や契約の前なら、この手間は惜しまないでください。

まとめ

ネットの会社情報は、入口としては本当に便利です。
ただ、それだけで判断すると、別の会社の情報や、昔の情報をつかまされることがあります。

今日お伝えした3つの確認をもう一度並べます。

  • 社名ではなく、法人番号で照合する。同じ社名の会社は珍しくありません
  • 情報の日付と状態を見る。閉鎖した会社も、動いていない会社も、検索には出てきます
  • 一次情報までさかのぼる。社名や住所は借り物のこともあります

どれも無料か数百円でできることばかりです。
一件あたり10分もかかりません。

調査員時代、私が一番怖かったのは「わかったつもり」でした。
気になる会社があれば、まずは法人番号公表サイトを開いて、13桁の番号を確かめるところから始めてみてください。